・本書は、全国の少年鑑別所、刑務所、拘置所で犯罪者を心理学的に分析する資質鑑別に従事し、これまでに心理分析した犯罪者が1万人を超えた著者が、子どもの可能性を潰さずに伸ばす子育ては、どのように実現できるのか、について解説した1冊。
・親は子どものためを思って、「ああしなさい」「これはしてはダメ」とさまざまな声がけをするもの。しかし、親のよかれは子どもにとっていいとは限らない。親自身は「子どものためを思ってやってきた」という認識である場合、「それが子どもにとってはいい迷惑だった」と言われてもなかなか受け入れられない。
・しかし、親が良いと信じていることでも、子ども自身にとってはいい迷惑という場合が多い。そして、最初は小さなボタンのかけ違いだったものが、次第に取り返しのつかない事態になっていくのだ。
・これはすべての親が陥る危険性のあること。「よかれと思って」「子どものために」という言葉が出たとき、「それは本当だろうか?」と自ら顧みる姿勢が必要ではないかと著者は考える。大事なのは子どもにとっての「主観的現実」。これは何度でも強調したいこと。
・「早くしなさい」「さっさと片付けなさい」「いい加減、支度しなさい」と子どもに対し、このような急がせる言葉を言ってしまう人は多い。しかし、小さい子どもはみな事前予見能力が育っていないので、なぜ急がなければいけないのかがわからない。
・事前予見能力は生まれながらに持っているものではなく、発達の中で身につけていくもの。なので、「学校まで歩いて15分かかるから、8時には出ないと朝の会に間に合わないよね」「8時に家を出るためには、どうしたらいいかな」というように、早くするべき理由を伝えて考えさせなければならない。これが、事前予見能力のトレーニングになるのだ。
・日本人の自己肯定感の低さは、謙遜の文化からきているところもあると著者は感じている。
・子どもは自分のことを「うちの子なんて」と言う親を目の前でみれば、さみしい思いをするはず。繰り返されれば自己肯定感は下がるな違いない。
・そういった場では、謙遜してもいいので、あとからフォローをすることが大事。例えば、相手が自分の子供の九九ができることを褒められて、謙遜したあとに、
「算数がまるでダメなんて言っちゃってごめんね。あなたもできると思っているよ」
「九九が言えるって褒められて嬉しかったね。お母さんもすごいと思っているよ。あなたは賢いと思っているよ」
このように必ず伝えることで、子どもの自己肯定感を損なわずにすむ。そのままにしておくのとフォローするのとでは大きな差になっていくはず。
・本書では、「「よかれと思って」は親の自己満足」「「みんなと仲良く」が個性を破壊する」「「早くしなさい」が先を読む力を破壊する」「「頑張りなさい」が意欲を破壊する」「「何度言ったらわかるの」が自己肯定感を破壊する」「「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する」「「気をつけて!」が共感性を破壊する」「子どもを伸ばす親の教育」という章で構成されており、「どんな人も更生できる」「きれいごと教育の問題点」「将来を考えさせる前に、現在の状況を理解する」「子どもの心を回復させるレジリエンスとは」「観察のポイントとは」「勉強しなさいと言うほどなりたくなくなる、ブーメラン効果」「反省ではなく、内省を促す」「模造紙を広げて家族会議」など1万人の犯罪者、非行少年の心理分析をした著者の経験や事例、そこから得た子どもの可能性を潰さずに伸ばす子育ての方法について紹介した内容となっている。
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