礒津政明「2040 教育のミライ」

礒津政明「2040 教育のミライ」

2022/8/16

・本書は、「教育分野にイノベーションを起こすもっとも強力な手段」と目される「教育×ブロックチェーン」における日本の第一人者で、教育フューチャーリストの著者が、日本の教育の現状ならびに、2040年に過ごす子どもたちが幸せであるために、教育はどうあるべきか、時代に合う形でどんな課題を、どう優先し、どんな手段で変えていけばいいのかについて考えた学びの未来予測本。
・教育を変えていくためには、まず正しい現状認識が不可欠。よく「文部科学省(以降、文科省)が変わらないかぎり、日本の教育はいつまでたっても良くならない」などと文科省だけが槍玉に挙げられているのを耳にするが、それは大きな誤解。
・日本の教育がこれほどまでに悪く言われるようになってしまったのには、「社会・省庁(政治家)・学校(教員)・学習塾・私たちを含めた親にそれぞれ責任の一端がある」こと、つまり、それぞれにとって教育にかかわっていくことが「自分ごと」であることやら理解し、危機感を自覚することが大切。本書では、
①日本社会
②文部科学省、経済産業省、総務省、デジタル省
③小学校・中学校・高校・大学とその教員たち
④塾(受験産業)
⑤親
の5つのレイヤー(層)に分けて紹介している。
・①の日本社会についてたが、例として、悪いインフレが進行する中で「労働者の賃金が上がらないこと」は、実は教育に深刻な影響を及ぼしている。「子どもにかける教育投資が回収できないことを見越して、親が教育にお金をかけなくなる」ことを意味するからだ。
※賃金が上がらない理由の主な2つの原因は「中小企業の多さ」と「雇用の流動性」であるが、その詳細ならびに、②〜⑤の概要については本書をご覧ください。
・日本の教育界に深く根づいた学力至上主義は、子どもの価値の大部分をペーパーテストの点数や偏差値で決める、というもの。しかも、そのペーパーテストで問われる9割は丸暗記した知識の量と、受験でしか役に立たない小手先のテクニックであり、社会に出れば、学歴とその人の社会的価値(社会貢献できる量)は必ずしもリンクしないことは明らかなこと。なのに、いまだに教育界はペーパーテストの点数だけで子どもの進路を決めている。
・この受験戦争が加熱するのに比例して奪われていくのが、子どもたちの自由な時間であり、放課後も週末も塾通いしたり、夏休みに大量の宿題と塾の合宿をするという涙ぐましい努力は、「更なる受験勉強をするための環境」を得るためのもの。受験勉強に追われ、さらに内申点を上げるために、本来は楽しめるような活動にも制約が出て、当然子どもたちは疲弊する。
・世界主要7カ国の若者の死因で、自殺が事故死を上回っているのは日本だけ。先進諸国に比べて学校生活でのプレッシャーが大きいのは、否定できない事実なのだ。
※その他の日本の教育の課題ならびに世界各国(中国やアメリカなど)の教育改革の事例、どうすれば、受験戦争は終結するのかの詳細は本書をご覧ください。
・本書では、「教育の未来を決める5大当事者」「教育改革は「個別最適化」で加速する」「「探究型学習」で先の見えない時代を生き抜く力を身につける」「学校では教えてくれない「プログラミング教育」の本質」「ソニー流「教育×メタバース」の新世界」という章で構成されており、「現代の日本の教育の現状」「どのようにすれば日本の教育の未来は切り開いていけるのか」「子どもが熱中できる対象を見つけるにはどうすればいいか」「海外の教育改革の事例」など、これからの未来の教育について考えさせられる内容が紹介されている。また、巻末には、著者とソニーグループシニアアドバイザーの平井一夫氏、学校法人渋谷教育学園学園長の田村哲夫氏との特別対談も収録されている。
本書の冒頭では、2040年の学校の未来がマンガ形式で描かれており、「無人バスでの登校、オフラインとオンライン学習の共存、教師の役割の転換(はげましとフォロー、教師だけでなく、副業としての活動(パラレルキャリア)としての兼務など)、暗記や一斉授業がない。選べる給食など、進化した教育の実践の様子が紹介されている。これからの教育について考える機会になる本なので、ぜひお手に取ってみてください。
2040年に、冒頭で漫画で紹介されている教育が実現されることを心から願ってます。
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